ワインについての説明などで「新世界のワイン」という言葉を耳にしたことがありませんか?
ヨーロッパなどの古くからワインが造られている産地に対して、ワイン造りの歴史が比較的浅い産地を新世界と呼びます。
新世界と言っても歴史は200年ほどあり、すでに各産地ではオリジナリティあふれる高品質なワインが生みだされています。
そこで今回は、新世界ワインについてご紹介します。
新世界ワインとは?
新世界ワインとは、ワイン造りの歴史が浅い国で生産されたワインのことです。ヨーロッパ以外の地域で生産されたワインを指します。
特にアメリカやチリ、オーストラリア、ニュージーランド、アルゼンチン、日本で生産されたワインが有名です。新世界ワインは、大航海時代にヨーロッパの移民によって伝えられたのが始まりです。
新世界のワインは、ヨーロッパ諸国のワイン文化の影響を受けながらも、わずか200年くらいの歴史の中で、各土地の気候や土壌などのテロワール、食文化に溶け込むようオリジナル性を磨いてきました。
一方でヨーロッパのワインを旧世界ワインと呼びます。かつてはワイン造りの歴史が長い旧世界ワインに比べて、新世界ワインは新参者として軽視される傾向がありました。ただし近年では世界的に評価が高く、旧世界ワインに劣らないワインとして認知されています。
新世界ワインの特徴
新世界ワインは、伝統に縛られない自由なワイン造りが特徴です。
旧世界に比べると比較的温暖な産地が多く、果実味が豊かなしっかりした味わいのワインが造られています。
単一品種で造られるものが多く、ブドウ品種の味がダイレクトに味わえて、見た目にも分かりやすく、自分の好みのブドウ品種を見つけやすいのも新世界ワインの魅力です。
旧世界に比べ、土地代、人件費など、ブドウ栽培・ワイン造りにかかるコストが抑えられるためで、品質はもともと醸造自体の技術がヨーロッパから伝わっており、ヨーロッパのワイナリーも多く進出しているため、ヨーロッパの産地と品質は同等ながら、リーズナブルな価格でワインを楽しめるのです。
新世界と旧世界との違い
新世界に対して、古くからワイン造りがおこなわれてきたフランス、イタリア、スペイン、ドイツ、ポルトガルなどのヨーロッパのワイン生産国を「旧世界」と呼びます。
旧世界と新世界では、ワイン造りに対する考え方や規制に違いがあります。ラベル表記や味わいも異なるので、ワイン選びの際は参考してください。
旧世界はワイン造りの歴史が長いため、地域の文化に根付いた伝統やルールがあります。品種ではなく土地や生産者がブランドになっている点が特徴です。そのため、土地の特徴や味わいを事前に知っていないとワイン選びは難しいかもしれません。
一方で新世界ワインのラベルにはブドウ品種が記載されています。好みの品種が見つけられるので、初心者の方にはわかりやすいのが特徴です。
旧世界
- 考え方:土地がワインの性質に影響する
- 規制:栽培地域と使用できるブドウ品種が紐づいて定められている
- ラベル表記:土地や生産者の名前が大きく書かれている(主に品種は書かれていない)
- 味わい:マイルドな香りと渋みの強いワインが多い
新世界
- 考え方:ブドウ品種がワインの性質に影響を与える
- 規制:栽培地域は定められているが、ブドウ品種は自由に使用できる
- ラベル表記:使用したブドウ品種が大きく書かれている
- 味わい:香りが強く、果実味が豊かなワインが多い
新世界ワインの産地
それでは、ここから代表的な新世界ワインの産地をみていきましょう。
アメリカ
新世界ワインの代表とも言えるのがアメリカ(カリフォルニア)ワイン。生産量ではヨーロッパに次ぐ世界第4位。
アメリカワインの歴史は、18世紀にスペイン宣教師がカリフォルニアでワイン生産を始めたことが起源です。カリフォルニアワインは1976年の「パリスの審判」で、フランスの一流ワインを超えた実力が認められました。そこからアメリカワインが世界的に注目を浴び、有名になっています。
アメリカワインの実に90%がカリフォルニア州で生産されており、カリフォルニア州の北部に位置するナパ・ヴァレーには、世界的に有名な高級ワインのワイナリーがあります。
使用されているブドウ品種はカベルネ・ソーヴィニヨンやメルロー、ピノ・ノワールなどです。ブドウ本来の味を力強く感じられる濃厚な果実味が魅力です。
カリフォルニアで造られるワインは、アルコール度数が高めで濃縮された果実味のある赤ワインが多く、白ワインは樽の香りが際立つ、クリーミーなものが比較的多いです。
チリ
チリでは16世紀半ばにスペイン宣教師によってブドウ栽培が始まり、19世紀後半にワイン造りが本格化しています。
最も栽培されているブドウ品種は「チリカベ」と呼ばれるカベルネ・ソーヴィニヨンです。ほかにも黒ブドウ品種ではメルローやカルメネール、白ブドウ品種ではソーヴィニヨン・ブランやシャルドネなどが栽培されています。
チリはコストパフォーマンスの高いワインを生産することでも有名で、なんと日本でワイン輸入量第1位になったのは、フランスでもイタリアでもなく、チリワイン!
チリワインは味のばらつきが少なく、初心者にとっても馴染みやすい風味が魅力です。
アルゼンチン
アルゼンチンのワインの年間生産量は、なんと世界で第5位!(2020年度)
新世界ワインではアメリカに次ぐ生産量で、消費量でもトップクラスのワイン大国なんです。
1550年代に宣教師によって、当時スペインの支配下だったアルゼンチンに苗木を植え付けたことがアルゼンチンワインの始まりだといわれています。ただし本格的なワイン造りが始まったのは、19世紀以降です。アルゼンチンワインの生産地として有名なのは、西部に位置するメンドーサ州です。アルゼンチンワイン生産量の約70%を占めています。黒ブドウ品種はマルベック、白ブドウ品種はトロンテスが主要品種です。赤ワインは果実味と力強さ、白ワインは酸と果実味のバランスが良い味わいがあります。どちらも華やかな味わいが特徴です。
オーストラリア
オーストラリアのワインは、1788年にイギリス人によってブドウが持ち込まれたことが起源になっています。その後本格的なワイン造りが開始されたのは19世紀前半です。
オーストラリアでは、ブドウの栽培方法やワインの醸造方法は細かく規定されていません。そのため自由な発想の革新的なワイン造りも行われています。たとえば亜硫酸を使わない自然発酵の「ナチュラルワイン」が有名です。
オーストラリアワインの最も代表的なブドウの品種であるシラーズは、奥深く豊満な味わいで世界でも高い評価を得ています。
白ブドウ品種ではシャルドネが主に使用されています。上品で豊かな果実味と、スパイシーな味わいが魅力です。
日本
日本のワイン造りは、1877年に山梨県で日本初のワイナリーが設立されたのが始まりです。その後1970年代ごろから、辛口のワイン造りが日本全国で行われるようになりました。
日本には現在300を超えるワイナリーがあり、北は北海道から南は沖縄まで、ワイナリーがないところは2県のみでほぼ全国でワインがつくられています。
日本ワインは繊細でフルーティーな味わいが魅力です。
今回は、新世界についてご紹介しました。
新世界の品種を重視している点が特徴です。それによりワインラベルにも大きく品種が記載されています。消費者にとっては選びやすいのがメリット。
新世界のワインは、果実味が豊富で飲みやすいものが多いので是非、チャレンジしてください。
コメント